診療科・部門・センター
眼科

午前 9:00~12:00 午後 13:00~17:00※

※受付は診療終了時間の30分前までにお願いします。

住所:〒650-0047 神戸市中央区港島南町1丁目6-7
電話(078)945-7300(代表)

  • 手術に関することは、各診療科窓口、日帰り手術当日の体調・麻酔に関することは、麻酔科へお問い合わせください。

診療の特色

小児は眼に異常が生じても、訴えが遅れたり曖昧であったりすることが多いため、病気の発見や診断が遅れる傾向にあります。特に片眼の異常では全く症状を訴えず、生活態度からも周囲の人間に気づかれることなく過ごす結果、深刻な病状に至ってしまう場合も少なくありません。お子さまの発する軽微なサインを見逃さず、出来るだけ早期に異常を異常として捉えることが大切です。

小児、特に小さな患児の場合、視力や視野、眼圧といった検査が難しいことがあります。当科では小児の検査に特化した検査機器を備え、視覚発達の程度や異常の有無を正しく評価出来る様にしています。

小児は視力や両眼で見る力などの視機能が発達する途上にあります。例えば、生まれた直後の視力は0.02程度とされていて、生後の適切な視覚条件、環境の中で成長する結果、3歳頃に1.0に達します。生まれつき目に異常があったり、成長期に病気が生じたりすると、視機能の発達が妨げられ、良好な視力が得られないことになります。また、成人の病気と違って、治療によって病気が治ってもすぐに良好な視力が得られるとは限りません。病気の治療後も遅れた視力を回復させる、すなわち成長を軌道に戻すために眼鏡の装用や弱視訓練などが必要になります。

疾患と症例

視機能の異常

弱視

弱視は視力発達の感受性期に適切な視覚刺激を受けなかったことにより視覚の発達が停滞、遅延することで起こります。弱視には要因別に形態覚遮断弱視、屈折異常弱視、不同視弱視、斜視弱視に分類されます。治療は視力発達の感受性期に治療するほど治療反応が良く、逆に感受性期を過ぎた後の治療は反応が悪くなります。治療としては原因となる要因に対しての治療が必要です。例えば先天白内障などの形態覚遮断弱視に対して白内障手術を行い、その後屈折矯正のための眼鏡・コンタクトレンズ装用します。その他悪いほうの目で見る訓練(遮閉訓練)などがあります。

斜視

両眼の視線が合わず、片眼で見ている状態です。小児の斜視の大半は共同性斜視、つまり、見る向きによって斜視の状態が変わらず一定しています。斜視の状態で見ることに感覚適応しているため通常、複視(物が二重に見える)は訴えません。一方、先天性の眼球運動障害や頭蓋内疾患、眼球運動筋の炎症など後天性の要因により麻痺性の斜視を発症します。この場合は麻痺筋の作用方向に顔を向けた際に斜視が表面化します。斜視よりも顔を回す、首を傾けるなど頭位の異常が目立つ傾向にあり、また、複視を訴えたりその回避行動である片目を瞑ったりします。

眼振

眼振には生後まもなくより見られる先天性眼振と、成長期に出現する後天性眼振とがあります。後天性の場合では脳幹障害が示唆されるので先天性と後天性の鑑別は重要です。当院では眼振の他覚的な評価として眼球電図(EOG)を行っています。先天眼振の治療には屈折異常の矯正のほか、プリズム治療や眼球運動筋に対する手術などがあります。

心因性視力障害

心因性視力障害は眼鏡で矯正しても視力がでず、検査をしても眼自体に異常がないものです。ストレスが関わっていることもありますが、その要因の解決が難しいこともあり長期的な経過観察が必要です。視力改善がない方は精神科の先生とも協力することがあります。

外眼部の疾患

鼻涙管閉塞症

涙の排出経路である涙小管、涙嚢、鼻涙管の閉塞により起こります。症状としては流涙が多く、乳児期の流涙の多くは鼻涙管が鼻腔に開口する部位での機能的閉塞によるもので自然経過する例も多いです。診断には涙道通水検査を行い閉塞の確認が必要です。涙嚢マッサージにより大半は治癒しますが、改善しない場合には涙道ブジー、涙道チュービングなど症状に合わせた治療が必要になります。

結膜炎

ブドウ球菌などの細菌やアデノウイルス(流行性角結膜炎)などのウイルスの感染による結膜の炎症です。主な症状は結膜の充血や伝染源となる眼脂、流涙などです。単純ヘルペスウイルスは初感染時には症状がなく、潜伏感染したウイルスが後年、活性化する際に樹枝状の角膜潰瘍や角膜炎を起こすなど重症化がみられます。
アレルギー性結膜炎は花粉やハウスダストなどが原因で強い痒みが出ます。重症タイプの春期カタルでは結膜に乳頭状の増殖組織が生じ角膜上皮の障害を伴います。異物感や羞明が強く、流涙もみられます。

眼瞼内反症

まぶた(眼瞼)の未発達、特に瞼板の形成不全が原因で睫毛が内側に向かい、結膜や角膜に接触する状態です。成長により自然に治癒する場合がある一方、角膜障害が遷延する例では手術が必要になります。

霰粒腫・麦粒腫

霰粒腫はまぶたの縁に開口する脂腺(マイボーム腺)が閉塞して生じる非感染性の炎症疾患です。麦粒腫(ものもらい)はまつげの脂腺や汗腺に細菌感染を起こして発症する急性化膿性の炎症疾患です。ともの急性期にはまぶたの腫れ、発赤、脂質の漏出がみられて痛みを伴います。霰粒腫は慢性化すると無痛性の結節(慢性肉芽腫)を生じます。麦粒腫で自然吸収がない場合は疼痛が持続しまぶたに硬結(膿瘍)が残ります。これらの場合は手術が必要になります。

眼瞼下垂

上まぶた(眼瞼)が下がっていて目を十分に開けられない状態です。上眼瞼挙筋の発達不良などによる先天性のものと外傷や筋無力症など後天性のものがあります。目が開かないことにより顎をあげて見たり(顎上げ頭位)、額にしわを寄せて眉毛を上げたりといった症状がみられることがあります。眼瞼下垂の程度によっては弱視の要因となります。この場合は弱視治療や手術を行います。

内眼部の疾患(代表的なもの)

白内障

出生時より水晶体混濁を認める先天白内障と、生後に発症し混濁が進行する若年性白内障があり、小眼球、角膜混濁、虹彩形成異常、瞳孔膜遺残等の合併がみられますが、多くは白内障単独で発症します。このため、軽度の混濁や片眼性では発見が遅れがちです。原因としては、発生異常の他に風疹等のウィルス感染、母体からの薬剤移行等があります。また、ガラクトース血症、低カルシウム血症等の代謝異常関連疾患をはじめ、染色体異常、骨系統疾患、ミトコンドリア異常など多くの全身疾患に合併します。先天性以外の原因としても、外傷やステロイド剤の使用、アトピー性皮膚炎等において合併する場合があります。
弱視管理として合併する屈折異常の矯正や優位眼の遮閉、手術による水晶体の除去や眼内レンズ挿入、術後のコンタクトレンズや眼鏡の装用を行います。

緑内障

高い眼圧により視神経が障害され視野狭窄が進行します。視力も障害されますが、小児の場合、角膜、強膜ともに脆弱なため瘢痕性の角膜混濁および眼球の拡大による強度近視など形態覚遮断弱視の要素が大きいです。原因は眼内の房水を排出する隅角線維柱帯の発達異常であることが多く、これに角膜混濁(ペーター奇形、他)、先天無虹彩、強角膜など他の異常を合併する場合があります。
早発型とりわけ胎児期より髙眼圧を呈する先天緑内障は一般に角膜の拡大、浮腫、混濁が高度で牛眼と呼ばれ、一見して異常と認識されます。一方、早発型、遅発型ともに徐々に進行するタイプは流涙や眼脂、眼瞼痙攣など一般的な症状のみで推移する場合が多く、発見が遅れる傾向にあります。治療は小児の場合は、薬物治療は限定的で原則、手術が必要になります。

網膜芽細胞腫

網膜由来の悪性腫瘍で、年間の国内発症数は80名前後です。患者の7割が瞳孔からの反射が白く見える白色瞳孔で発見されますが、斜視や結膜充血などが初発の症候となる場合もあります。両眼性の多くが乳児期に、片眼性も2歳までに発症することが多いですが、まれに5歳以降に発見される場合もあります。

スタッフ

野村 耕治(のむら こうじ)
役職:
眼科 部長
卒業年:
昭和61年 神戸大学医学部卒
資格等:
所属学会:
河原 佳奈(かわら かな)
役職:
眼科 医長
卒業年:
平成25年 高知大学医学部卒
資格等:
豊国 秀昭(とよくに ひであき)
役職:
眼科 フェロー
卒業年:
平成30年 神戸大学医学部卒
牧 仁美(まき ひとみ)
役職:
眼科 フェロー
卒業年:
平成29年 神戸大学医学部卒
土橋 一生(つちはし かずき)
役職:
眼科 フェロー
卒業年:
平成29年 帝京大学医学部卒
その他のスタッフ

視能訓練士4名が視力検査、斜視検査、視野検査、OCT撮影などを担当

外来診察担当医

午前外来
野村 他2名
手術外来
野村 他2名
外来
野村 他2名
手術
午後手術専門外来
野村 他3名
専門外来
野村 他3名
専門外来
野村 他3名
手術
※完全予約制です。
…初診受付
※急な学会・出張等で休診・代診になる場合がありますのでご了承ください。

診療実績

医師4人体制で小児眼科ならびに弱視、斜視に対する専門の医学知識に基づいた診断と治療を行っています。患児の年齢、疾患によっては日帰りの全身麻酔下での検査も行っています。手術が必要な疾患(斜視、白内障、緑内障、外眼部疾患など)については入院のうえ治療を行います。

2023年実績
初診患者数732名
 新生児113名
 乳児160名
 幼児(6歳まで)202名
 学童232名
 思春期(13歳以上)25名
手術件数(総数)325件
 斜視184件
 眼球振盪症0件
 鼻涙管閉塞8件
 眼瞼疾患81件
 緑内障4件
 白内障22件
 角結膜疾患1件
 網膜硝子体疾患(含む未熟児網膜症)5件
 外傷・その他20件
2022年実績
初診患者数752名
 新生児114名
 乳児158名
 幼児(6歳まで)207名
 学童244名
 思春期(13歳以上)29名
手術件数292件
 斜視156件
 眼球振盪症0件
 鼻涙管閉塞12件
 眼瞼疾患76件
 緑内障8件
 白内障16件
 角結膜疾患1件
 網膜硝子体疾患(含む未熟児網膜症)16件
 外傷・その他6件

医療関係者の方へ

当科は日本小児眼科学会より小児眼科専門施設としての認定を受けております。
臨床研究の成果を日本小児眼科学会、日本弱視斜視学会、日本眼科学会、臨床眼科学会等で定期的に報告、また、適宜、WOC、ISAなどの国際学会でも報告しています。これまで注力して来た分野は乳児内斜視、斜筋異常、先天眼振、先天白内障、先天緑内障、網膜芽細胞腫等。

小児眼科専門医の不足により、当科へは現在、近畿一円はもとより、域外遠方の施設からも患児のご紹介をいただいている状況です。眼部先天異常、小児眼疾患、眼位・眼球運動の異常などに関する診断、治療に苦慮されている場合は遠慮無くご相談ください。