お知らせ

2023年の概要

2023年もマンパワー不足と5月まではコロナ禍で大変厳しい状況でしたが大きなトラブルや事故もなく無事1年を終えることができました。
2023年12月2日に当院講堂で「令和5年度兵庫県立こども病院周産期医療センター研修会」を開催し、名古屋市立大学医学研究科新生児・小児科学分野准教授 岩田欧介先生から「“とりあえず冷蔵庫”が医療で通用しない5つの理由と”ならばとりあえずどうするのか”を一緒に考える勉強会」(:新生児低酸素性虚血性脳症に対する脳低温療法)の特別講演をいただきました。

放射線科医師と胎児MRIを撮影した症例の経過とMRIの読影、その後の経過を検討する「MRIカンファレンス」を5月29日、10月23日に開催しました。報告書からだけでは伺えないMRIの読み方について研修することができます。

病状が落ち着いた方や、紹介元で対応可能な妊娠週数となれば、紹介元へ戻っていただいております。2023年のバックトランスファー(紹介元へ戻れた方)は400名でした(外来レベルで行われたものも含む)。当院には産科以外の成人を診る常勤の専門医がおりませんので、母体合併症に関しては神戸大学医学部附属病院や神戸市立医療センター中央市民病院等をご紹介しております。

産科病棟の取組みとしては、「超緊急帝王切開シミュレーション」を産科、新生児内科、麻酔科、手術室が協力して行いました。妊産婦のメンタルヘルスに関わる「EPDS会議」、「プレネイタルビジット会議」、「アドバンス助産師会」を定期開催しています。また、「助産師外来」を始めました。2018年から「周産期メンタルヘルス」を取組み始め、2019年から当院で分娩した方に「バースプラン」、「バースレビュー」、「ねぎらい膳」を、通院中の思春期〜成人患者に対し移行期支援の一つとして性教育等を行う「いちごクラス」を開始しました。また、「母乳外来」は、他院で分娩したが、児が当院入院・通院中の方の利用が増加しています。2020年9月より切迫早産等で長期入院加療された方に「産後リハビリテーション」を導入しました。長期の安静入院に伴い足腰の筋肉が衰えますので患者様から高い評価を得ております。帝王切開分娩が予定されている方へ外来にて帝王切開のオリエンテーションを行う「帝王切開クラス」を開始しました。超未熟児出生が予想される症例や生後児に何らかの加療(処置、手術)を受ける症例に対し「プレネイタルビジット(出生前小児保健指導)」の充実化を行っております。

2018年春の医師の大量退職(医師7→3名)とその後の状態改善に十数ヶ月かかりましたが、2019年9月以降は常勤医師が当直をしていない時間外(現在は月2日の休日夜間と月1日の休日日勤帯)以外は、空床がある限り母体搬送を受け入れております。また、2022年2月からは、妊娠26週未満の単胎、妊娠29週未満の多胎の切迫早産や前期破水、生後速やかに何らかのinterventionが必要な胎児形態異常例は産科病棟が満床であっても受け入れております

2023年の医師の異動に伴い2023/8/1以降は医師10人体制(ただし当直・オンコールがフルに可能な医師は6人)となりました(総合周産期母子医療センター産科には当直・オンコールが可能な医師が8人以上必要とされています)。

当院は総合周産期母子医療センターとしてハイリスク妊産婦のみを受け入れる紹介型医療施設です。病床はMFICU(母体胎児集中治療室)6床を含めて22床です。「LDR(陣痛・分娩・回復室)」1室と羊水検査、羊水除去、胎児胸水除去等を行う「侵襲的検査処置室」1室、陣痛室1室、分娩室2室があり、外来と病棟が隣接しています。また、産科専用手術室1室を有し、4D超音波断層装置が3台あり、2人当直制(第1当直の8%と第2当直の75%は院外医師が担当)を行っています。そして、「近畿ブロック周産期医療広域連携事業」おける兵庫県の拠点病院として他府県からの母体搬送にも対応しています。遺伝相談も行っており(出生前診断・遺伝相談外来)、2022年NIPTの認証医療機関(基幹施設)に認定され7月からNIPTを開始しました。

2023年の入院理由の上位は「切迫早産」、「胎児形態異常」、「胎児発育不全」、「前期破水」、「多胎」です。

当院は兵庫県の周産期医療の「最後の砦」として診療レベルの維持・向上に努めております。胎児機能不全等の適応があれば手術決定から15分以内の児の娩出を目指す「超緊急帝王切開」を行なっております。

当院は「周産期新生児医学会専門医制度」の母体胎児研修の基幹施設であり周産期新生児医学会専門医を育成しています。