耳鼻咽喉科の扱う範囲は、耳鼻のどだけではなく、頭蓋内・眼窩を除く頭部顔面と、鎖骨上及び頸椎より前方の頸部にわたります。頻度の高い疾患を中心に解説します。(文責:大津雅秀)
新生児の聴覚障害は約1000人の出生に一人の頻度で出現するとされ、難聴に気づかす経過した場合には言語発達が遅れ、コミュニケーションや社会性の発達にも影響が生じる。約半数は超低出生体重児、重症仮死、子宮内感染などのリスクファクターを持つ児であるが、残り半数は難聴リスクのない児である。早期に診断して、生後6ケ月頃までには補聴器装用による聴覚補償を行った上で適切な聴能指導を開始する必要がある。補聴器の効果が十分でない場合には、1歳過ぎから人工内耳手術の検討を要する。スクリーニング検査が始まるまでは、2歳を過ぎてから発語がないために発見されることがほとんどであった。診断はABRやCORなど発達段階に応じた各種聴力検査の結果を総合して行う。
AABRやOAEを用いた新生児聴覚スクリーニング検査が先天難聴の早期発見のために約20年前から導入されるようになってきた。実施率は地域によって85~99%と格差が依然大きい。兵庫県での受検率は93%(2022年)。 要精密検査となるのは受検者の0.7%程度である。日本耳鼻咽喉科学会の全国集計では、要精検のうち精密聴力検査の結果、約1/4が両側難聴、約1/4が片耳難聴、残り約半数が聴力正常とされている。新生児期に要精検とされた保護者の心理に配慮した説明や支援が必要である。
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